「熱本」「Zero to One」「Exponential Organizations」と、「ビジョナリー・カンパニー」クロス読解のご提案
いろいろ読んでいると頭散らかりませんか
年初から「熱本」「Zero to One」「How Google Works」「Exponential Organization」など会社や働き方について論じ、いかにして「世界を変える(ほどのインパクトを生む)か」について論じた本を縦横無尽に読み比べることができた。
遅ればせながら真剣に「Yコンビネータ―」も読んだ。あと「孫子」解説本も読んだ。
読書体験が似てる人はリバネスに興味を持ちやすいかもしれない。
「熱本」は最高だが、敢えて次点の大ベストセラー「ビジョナリー・カンパニー」をレファレンスとして推しておきたい。これを読んで「こういう組織がつくりたい」「かくありたい」みたいなものを”頭でっかち”でもいいので持った状態で望んできてほしいな〜。っどういう組織で働きたいか、みたいな理想を持ってくことって大事だと思うんだよね。就活したことあるならなおさら。
というわけでビジョナリー・カンパニーを踏まえつつ、上記の本を読む方法というのを推しておきたい。
ビジョナリー・カンパニーの何を比較軸とするべきか
ビジョナリー・カンパニーの目次をさらっておく
【目次】
第1章
最高のなかの最高
十二の崩れた神話
調査プロジェクト
データはあくまでデータ第2章
時を告げるのではなく、時計をつくる
「すばらしいアイデア」の神話
「すばらしいアイデア」を待つのは、悪いアイデアかもしれない
企業そのものが究極の作品である
偉大なカリスマ的指導者の神話
建築家のような方法 - 時計をつくる
CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ挿話 「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かす
第3章
利益を超えて
現実的な理想主義 - 「ORの抑圧」からの解放
基本理念 - 利益の神話を吹き飛ばす
「正しい」理念はあるのか
CEO、経営幹部、起業家への指針第4章
基本理念を維持し、進歩を促す
進歩への意欲
基本理念を維持し、進歩を促す
CEO、経営幹部、起業家のためのキー・コンセプト
第5章
社運を賭けた大胆な目標
BHAG- 進歩を促す強力な仕組み
重要なのは指導者ではなく、目標 - 時を告げるのではなく、時計をつくる
CEO、経営幹部、起業家への指針第6章
カルトのような文化
「病原菌か何かのように追い払われる」
IBMが偉大な企業になった過程
ウォルト・ディズニーの魔法
プロクター&ギャンブル - 本社に浸りきる
CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ
イデオロギーの管理と業務上の自主性第7章
大量のものを試して、うまくいったものを残す
進化する種としての企業
3M - ミネソタの突然変異製造機がいかにしてノートンをつきはなしたか
3Mでの「枝分かれと剪定」
CEO、経営幹部、起業家にとっての教訓
「機軸から離れない」ではなく、「基本理念から離れない」第8章
生え抜きの経営陣
社内の人材を登用し、基本理念を維持する
CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ第9章
決して満足しない
現状を不十分と感じるようにする仕組み
将来のために投資する - そして短期的にも、好業績をあげる
マリオット対ハワード・ジョンソン - アメリカの偉大なチェーンの没落
CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ
黒帯の寓話第10章
はじまりの終わり
一貫性の力 - フォード、メルク、ヒューレット・パッカード
CEO、経営幹部、起業家のための一貫性の教訓
これは終わりではないおわりに - 頻繁に受ける質問
よく議論になる≒リバネスのビジネス上で葛藤がうまれやすいことは、例えば
『第2章 時を告げるのではなく、時計をつくる』
『挿話 「ORの抑圧」をはねのけ、「ANDの才能」を活かす』
『BHAG- 進歩を促す強力な仕組み』
『大量のものを試して、うまくいったものを残す』
『基本理念を維持し、進歩を促す』
『究極の作品は製品ではなくて会社』
といったあたりだ。
- 作者: ジム・コリンズ,ジェリー・I.ポラス,山岡洋一
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 1995/09/26
- メディア: 単行本
- 購入: 33人 クリック: 196回
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「Zero to One」はカルト文化とBHAGの本
ピーター・ティールのテクノロジー観やベンチャー観が書かれたZero to Oneは、ガツンとくる1冊だった。テクノロジーでゼロをイチにするような仕事にこそ意味があると書いた本書は、研究者の人材育成を行って、テクノロジー基盤の起業を促進するTech Planterの仕組みを裏支えする哲学の一部となっている。
技術でゼロをイチにする、という大胆な目標はBHAGの話とかみ合わせがよい。社運をかける、すなわち前例がないような技術にもとづく新規性を追いかけることはZero to Oneアプローチであり、ビジョナリー・カンパニー的でもある。
ほかにも独占の大切さ、「他の誰もが信じていないが、自分だけだ真実だと見抜いたこと」など新技術を持った研究者に当てはまりやすいことがたくさん書いてあった。
また、ピーター自身がペイパルマフィアを呼ばれるように「マフィア」はある種の「カルト文化」のことだ。
「熱本」はBHAG、カルト文化などを「どうやって始めるか」「どうやって続けているか」という実例の本
熱本はリバネスのことをあの手この手で説明した本。この本がどうして、他の本と書いてあることと違うのか、正直、レファレンス不足で説明できなかった。
ただし、今までのMBA的な経営書とは本当に似ていないと思うし、Google本とも違う。2014年の一年の読書をかけて、どう違っているのか説明できるようになった気がする。
「How Google Works」もBHAGとカルト文化の本
Googleは基本理念や10の約束としてまとめており、本書のなかで採用プロセスや目標管理の仕方(OKR)が書いてある。ビジョナリー・カンパニー的にはカルト文化の解説だと思った。
実際、How Google Worksにはプログラミング言語やハードウェアの話は一切登場しない。ただただ人事のことが書いてあった。なかでも、「へえそうなんだ」と思ったのは
経営者をしていて意外だったのは、プロジェクトチームにとんでもない野心を抱かせるのは、とても難しいということだ。どうやらたいていの人は型破りな発想をするような教育を受けていないらしい
とエリック・シュミットがこぼしていたことだ。
普通にしていたらBHAGを抱くようになるのは大変なことだ、と再確認できた。
How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント
- 作者: エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ,土方奈美
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2014/10/09
- メディア: 単行本
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「Exponential Organization」は企業の成長期の本
この本がもっとも新しいことを書いていて、最も悩ましい。ビジョナリー・カンパニーは50年続いた会社の分析であることに対し、ExOはせいぜい10年ちょっとの会社(長くてもGoogle)の話だからだ。
ただし、ここ数年のUberやAirBnBといった例や、DIYDrones、Github、TEDといった例が入っており、情報技術によるDisruptiveな変化についてはよくわかるようになった。
ビジョナリー・カンパニーのフォーカスが長期的、すなわち発展〜継代〜継続的な発展 というロングスパンに対し、ExOはいままさに起こりたての出来事について着目している。
Githubはビジョナリー・カンパニーか?TEDはビジョナリー・カンパニーか?
こういう疑問が生まれる。
似ていると思ったのはBHAG。ExOにはMassive Transformative Purpose(大規模をまきこめる変革を起こすような目標)があるべき、で、MTPと趣旨を重ねるようなコミュニティをつくれ、と言っていたりする。BHAGとMTPはかなり似た概念。だが、BHAGはあくまで社内について言及している。というか前提として社内外の区切りがかなりハッキリしている。一方、ExOではクラウドソーシングなどが当たり前なので、社内にかぎらず、たくさんの(Massive)が巻き込めることが至上命題になっている。
これに気づけたことで社内外が共感して、参加したいと思うような理念こそが、今のビジョナリー・カンパニーには求められている。と考えを更新できた。
ただ、ExOはカルト文化というか、自律性とダッシュボードを重視する。色んな考えの人がMTPに共感して参加するので、そこに文化があるのかどうか。
ただし優れたMTPやそのたExOのための仕組みは、文化をたしかにつくっている。Uberの運転手やAirBnBのホストファミリーは文化をつくっている。
ExOにかけているのは、50年生き続けた、という実績だ。
だからUberやAirBnB、GithubやTEDが長続きしたらビジョナリー・カンパニーの内容も変わっていくだろう。
- 作者: Salim Ismail,Michael S. Malone,Yuri Van Geest
- 出版社/メーカー: Diversion Books
- 発売日: 2014/10/14
- メディア: ペーパーバック
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めっちゃ長くなった。