科学雑誌つくってるけど、「メディアは5年後稼げるか? Monetize or Die?」の感想書くよ
紙メディアの問題、大事だけど20〜30代にはニッチなんじゃね?
掲題の本は、東洋経済オンラインを立ち上げた佐々木さんがまとめた、メディアビジネスの本です。
5年後、メディアは稼げるか――Monetize or Die?
- 作者: 佐々木紀彦
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2013/07/19
- メディア: 単行本
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稼げるか?というシンプルかつ切実な問について学生へ講演するつもりで書いたというこの本は、そんなに厚くないし読みやすいと思います。
しかし、自分と同世代や若い人(大学生)に読者がいるとはあまり思えないんです。なぜってネット全盛のこの時代に、紙の雑誌や新聞をつくったことがある20代のほうが少ないと思うから。ふつう、ブログやSNSでデジタルな発信が前提だもんね。
紙用のレイアウトの知識とか、編集のしかた、校正プロセス、スケジュールなどを知っている人のほうが20〜30代では希少なんじゃないかしらん。
デジタルネイティブ世代には、どうしてそんなことが問題と言われているのかピンとこない。「紙しか作れない」とか「紙じゃないとダメなんだ」という強いこだわりを持った人が職場の大半という状況はイメージしにくいかもしれません。
紙がメインの業界があるんです
そうは言っても紙が根強く、電子化の恩恵をうけていない業界があるんです。それが学校業界です。私は仕事で科学雑誌『someone』をつくっています。これが紙で発行していて、ずいぶん前からwebやらiOS版や電子書籍版とか出している。しかし、学校にはなかなか届けにくい。届かない。
もちろん、電子デバイスが普及してないとか色々ありますが、まず先生方が「私、電子版使える!」と思ってる人が少ない。PDFダウンロードならどうだ?と思っても、仕事用のメールアドレスを持ってない先生もけっこういるんですよ?信じられませんが。
だから、メールするより、FAX。FAX最強。
やべえ、この本に書いてあることウチの業界のことかも...?!
学校向け科学雑誌の職場の雰囲気、編集哲学、配布形態は自然と紙メディアのそれに似てきます。例えば、今はこんな特徴があります。
- 余韻とかを残したタイトルを使う。
- デザインやレイアウトを左右するのは「見開き」「1ページ」かどうか。
- 配布は、学校の先生によるお取寄せ。授業時間内に配布される。
- 手に取るところまでは、先生の影響力が強い。子どもが科学に興味なくても大丈夫
- 記事の感想を拾うには、先生の協力が不可欠。逆に先生に指導力があれば、かなりの比率で感想をもらうことが可能。
- アンケートは紙によるもの。
そう紙なんですよ。
だから「デジタルやべえ、紙のままだと死んじゃう」とか言ってる業界の取組みが、観測衛星的に参考になるとニラんでいます。
さて、本書ですが、議論の大前提になるのが序章で説明されている7つの大変化。
序章 メディア新世界で起きる7つの大変化
●大変化1 紙が主役 → デジタルが主役
●大変化2 文系人材の独壇場 → 理系人材も参入
●大変化3 コンテンツが王様 → コンテンツとデータが王様
●大変化4 個人より会社 → 会社より個人
●大変化5 平等主義+年功序列 → 競争主義+待遇はバラバラ
●大変化6 書き手はジャーナリストのみ → 読者も企業もみなが筆者
●大変化7 編集とビジネスの分離 → 編集とビジネスの融合