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ハマるしかけ(Hooked)の読後振り返り

「ハマるしかけ」は、『誰かに新しい習慣を作らせたい』人向けの本というマニアックな本。章末のDO THIS NOWを読んで習慣化したいサービスの参考にされたし。

対象とされているマニアックな読者像

普通は「英語を勉強する習慣をつけたい」「運動する習慣をつけたい」「ノートを取る習慣を……」「早起きの……」と個人がどう習慣と向き合うかみたいな本のほうが多いと思う。で、英語学習の大家みたいな人たちが経験とtipsを共有する本が乱発されている。

子どもに、教え子に勉強する習慣をつけさせたいみたいなときはそういう本を読めばいいと思う。

この「ハマるしかけ」はグッと抽象度が高い。これまでの習慣とは違う、特にwebやスマートフォンウェアラブルなど新しいインターフェース上で、何かサービスやプロダクトを繰り返し使ってもらうことを目的とした人が対象だと思う。

いわゆる「グロースハック」とも相性がいい。

webメディアを運用している同僚に紹介したいと思った。SNSやソシャゲや艦これがなぜ流行ってるかをモデル的に理解したい方にもおすすめ。(参考:"Hooked" 「ハマるしかけ」出版記念イベントつぶやきまとめ - Togetterまとめ

 

何が書いてあるか

ハマるしかけの筆者はスタートアップを複数経験したうえでスタンフォード大でアカデミックに習慣形成について研究した人らしい。その研究成果として"Hooked model"という名称で心理モデルが提唱されており、それについての解説が書いてある。

リーン・スタートアップやグロースハック文脈で有名なAARRRモデルでいうところのActivation(利用開始から、初めて価値を感じるところまで)とRepeat(利用継続し、繰り返し価値を感じられるようにする)のところにフォーカスした内容となっている。

AARRRモデルについては後述*1

読後にやるべきこと

章末にまとめられているDO THIS NOW を実践するのが一番よい本書の使い方だ。

1 ハビタブル・ゾーン

  • あなたのビジネスモデルでは、どのような習慣が必要だろうか
  • ユーザーは、あなたのプロダクトでどのような問題を解決しようとしているか?
  • 現状の解決策は何か?
  • なぜ新たなソリューションが必要なのか?
  • あなたのプロダクトをユーザーが利用する頻度は?
  • あなたが習慣化したいのはユーザーの行動のどの部分か?

第一章ではそもそも、何を習慣化させたいのか、を考えるための章。現状を捉えて、戦略をたてるためのヒントが書いてある。*2

 

2 トリガー

  • あなたのプロダクトのユーザーは誰か?
  • あなたが狙う習慣の直前にユーザーは何をしているのか
  • ユーザーの行動を引き起こす可能性のある内的トリガーを3つあげてみよう
  • あなたのユーザーがもっとも多く体験しそうな内的トリガーはなんだろうか
  • 次の文の[ ]にあてはまる語句を探してみよう。「ユーザーに[ (内的トリガー)]が起こるたびに彼は[ (意図している習慣の最初の行動) ]をとる」
  • ユーザーが2番目のQの答えとなった行動をとる場面で機能する外的トリガーはなんだろう
  • ユーザーの内的トリガーが引かれたときに、外的トリガーをそこに近づけるにはどうしたらよいだろうか
  • 従来の技術(eメール、看板、携帯SMS)であなたのユーザーを惹きつけるための手法を、少なくとも3つ考えてみよう。次に思い切って現代では利用が難しい技術を用いて、あなたのユーザーを惹きつける手法も考えてみよう。

第2章は「トリガー」すなわち習慣としたい行動をおこすきっかけについての章だ。「腹減ったな」「あれなんだっけ」「気になる」といった心の動きを総称した内的トリガー と、「ランプが点いた」「ベルがなった」「声をかけられた」といった外的トリガーに分類して、どういったトリガーで習慣行動をはじめさせるか考える。*3

 

3 アクション

  • あなたが設計したプロダクトやサービスにおいて、ユーザーが体験する順番を考えてみよう。内的トリガーを感じるところから、そのプロダクトやサービスを使ったときに得られるリワードを手にするまでの過程で、何ステップの作業を必要とするだろうか?本章で解説した、シンプルな例と比べるとどうか?競合他社のプロダクトと比べるとどうだろう?
  • あなたのプロダクトを繰り返し使うことの障害になるものはなんだろうか。以下に挙げるものは含まれているだろうか?時間/お金/身体的な努力/ブレインサイクル(複雑すぎて頭をつかうようなことなど)/社会的な逸脱/非日常性(新しすぎるなど)
  • アクションを楽にするためのアイデアを3つ考えてみよう。
  • 習慣化のためのアイデアを経験則を元に考えてみよう

第3章ではあなたのプロダクトやサービスのなかでユーザーが取る行動(を如何に少ないステップにするか)が書かれている。例えばTwitterやPinterestはスクロールするだけで、思いがけない情報にであえる。極力シンプルなアクションで、「ホッ」「すげえ」といった報酬にたどり着けるようにすべし、ということが書いてある。*4

 

4 リワード 予測不能な報酬

  • ユーザー5人にインタビューを行い、あなたのプロダクトやサービスの良い点や利用の動機を探ってみよう。良い感触、意外な答えはあっただろうか?ユーザーが特に魅力を感じている点があっただろうか?
  • あなたのプロダクトを利用する際にユーザーが通るステップを見直そう。どのような報酬を用意すればユーザーのストレスを緩和できるのか。また、その報酬は満足のいくものでありながら「もっと欲しい」と思わせられるものになっているだろうか?
  • ユーザーの欲求が高まるような3種類の報酬を考えてみよう。・トライブ(集団) ・ハント狩猟 セルフ自己

 

第4章では、「ユーザーの欲求が高まる報酬」について書いてある。トライブ、ハント、セルフの3つがあると書いてある。この辺はマズロー5段階欲求説などを知っていれば別に目新しい内容はない。

 

5 インベストメント

  • あなたのプロダクトやサービスのフローを見直してみよう。再び利用する可能性が高まるような、どのような「ちょっとした作業」が行われているだろうか?
  • ちょっとした投資をしてもらうための方法を、それぞれ3つ考えてみよう。・次のトリガーになるような投資・コンテンツやデータ、レピュテーション、スキルなどの価値を蓄積されるような投資
  • トリガーによってユーザーが、再びプロダクトやサービスを利用するまでに、どのくらいかかっているのかを確認しよう。フックサイクルの期間はどのようにすれば短くできるだろうか?

第5章では、「ユーザーにちょっとした作業をさせて、いい気分にさせろ」 というようなことが書いてある。*5

 

8 習慣性のテストと習慣化の機会を探る

  • 利用者が長期に渡りプロダクトやサービスを利用するステップを発見するために、本章で述べたテストを実施しよう
  • 来週一週間、日用品を使う際に、自分の行動や感情を意識して、次の質問に答えてみよう
  • ・このプロダクトを利用することになったトリガーはなんだろうか。
  • ・自分は意図された通りにこのプロダクトを利用しているだろうか
  • ・どうすればこのプロダクトをより多くの人が手にとるだろうか?どんな外的トリガーを使うとリピーターになれるだろうか?プロダクトに対してもっと時間を費やしてもらうためにはどうすればいいだろうか
  • 普段あまり付き合いのない3人に声をかけて、それぞれのモバイルのトップ画面にどういうアプリがあるか見せてもらおう。普段通りに使ってもらい、意味のない行動や、新しい行動がみられないか確認してみよう
  • あなたのビジネスにチャンスあるいは脅威をもたらす新しいインターフェースを5つ考えてみよう

 最後に、このモデルをつかい続けてプロダクトのPDCAを回し続けるための習慣が提示される。

以上、これらの「DO THIS NOW」を実践できれば、「ハマるしかけ」の読者としては満点なのだと思う。

 

 

*1:

AARRRモデル

 

 

 

  • Acquisition(獲得とは、何も知らない訪問者が、関心のある見込み客になった時点を表します。)
  • Activation(クティベーションとは、関心のある見込み客が満足のいくユーザー体験をした時点を表します。)
  • Repeat定着とは、製品の反復利用やエンゲージメントを表します。これが製品/市場フィットの指標になります。)
  • Revenue(収益とは、お金を支払っていただくイベントをさします。)
  • Refferal(紹介とは、顧客が他の見込み客を連れてきてくれることです。)

*2:机に向かうとか、毎朝参考書を開くといったことが当てはまると思う。

*3:アラームがなったら机に向かうようにする、とか、勉強友だちをつくるとかそういう動機付けの工夫なのだと思う

*4:たしかに1時間かかるような大テストをやるより、ポチポチやるだけで練習できるほうが英語学習も捗ると思う。

*5:計算ドリルも、次第にノートがたまっていくと、自分の正答率データがたまるし、計算スキルも伸びるといったようなことだろうか。